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環境報告書 | KEK

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編集方針

高エネルギー加速器研究機構は大型の粒子加速器を建設・運転し、加速器科学の総合的発展の拠点として 研究を推進し、国内外の共同利用者に研究の場を提供するという使命を有しています。研究活動を行うに当たり、 地域、地球環境保全は不可欠であることを認識し、持続可能な社会の創造のため取り組んでいる活動について 職員、共同利用者、学生、関連企業、地域住民など幅広い層の方々にご理解いただけるよう作成しました。環 境という概念を広く捉え、機構の社会的責任を念頭において教育、地域交流等の社会貢献活動、労働安全衛 生管理の状況についても記載しました。

■ 対象期間 2012 年 4 月∼ 2013 年 3 月

※この期間以外はそれぞれに明記しています。

■ 対象範囲

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

 ・つくばキャンパス   〒 305-0801 茨城県つくば市大穂 1-1

 ・東海キャンパス   〒 319-1106 茨城県那珂郡東海村大字白方 203-1 ■ 作成部署 高エネルギー加速器研究機構 環境報告 2013 作成ワーキンググループ、

施設部施設企画課 施設企画グループ、環境安全管理室

■ 問合せ先

環境安全管理室

〒 305-0801 茨城県つくば市大穂 1-1

TEL:029-864-5498 E-mail:[email protected] ■ 公  開 2013 年 9 月

那珂IC 友部JC

日立南太田IC 日立南太田IC

至いわき 国道349号

至東京

国道6号

JR常磐線

至日立

東海駅 駈上交差点

笠松運動公園

PC DEPOT けんしん

東海村役場

  研   通   り

二軒茶屋交差点 (案内看板あり)

常磐自動車道

東海スマートIC (東海PA出口) 東海キャンパス周辺マップ

J-PARC ユーザーズオフィス

(1階) 孫目十字路交差点

首 都

東京方面 谷田部 IC

国道125号線

桜土浦 IC

国道354号線

土浦学園線 国道408号線

つ ばく スク

エ プ スレ 下妻方面

下館方面

常磐自動

車道

つくばJCT つくば中央IC

り 通 大 東 園 学

り 通 大 西 園 学 KEK つくばキャンパス

●バス停

つくばセンター つくば駅

研究学園駅 万博記念公園駅

みどりの駅

つくばキャンパス周辺マップ

つく

茨 城

J R

つくば エク

スプ

レス

LN

KEK つくばキャンパス

茨城空港

KEK 東海キャンパス

■ つくばキャンパス

 つくばエクスプレス「つくば駅」下車、路線バスで約 20 分  常磐自動車道「桜土浦」インターより約 30 分

■ 東海キャンパス

(3)

CONTENTS

トップメッセージ ・・・・・1

KEK 2012 ハイライト ・・・・3

機構の役割と組織 ・・・・ 14

環境との共生 ・・・・・・ 21

環境関連トピックス ・・・ 39

社会との共生 ・・・・・・ 45

用語集・・・・・・・・・ 52

第三者意見・・・・・・・ 55

編集後記・・・・・・・・ 56

• ヒッグス粒子の発見

• 胃がんを引き起こすピロリ菌由来の発がんタンパク質 の立体構造解明

• SuperKEKB

• 国際協力による衝突型・線形加速器計画:ILC

• KEK とは

• KEK の目指すもの • 機構の組織 • 基礎データ • 実績データ

• 環境方針 • 環境管理体制

• 環境目標・計画と達成度 • 環境負荷の全体像 • エネルギー • 温室効果ガス • 物質

• 水資源 • その他の資源 • 大気

• 環境会計

• 環境関連法規の遵守状況

• プラセオジム・ニッケル酸化物の高い酸素透過率の原 因を解明−燃料電池など、性能向上へ−

• 家庭用燃料電池の効率向上に寄与する原子が完全に 混ざり合った新規合金触媒の開発に初めて成功 • 岩塩(NaCl)構造をもつレアアースメタルの水素化物を

発見−水素貯蔵材料の高性能化に期待−

• 福島第一原子力発電所事故の影響調査、復旧に関わ る取り組み

• スーパーコンピュータと消費電力 • 省エネファンド事業

• KEK キャラバン • 科学者を育てる活動 • 地域との共生活動 • 産学官の連携活動 • 広報活動

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トップメッセージ

機構長からのメッセージです。

環境に対する負荷を最小限にとどめつつ、最大限の

研究、教育成果を得るための努力を継続

高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、大型加速器を中心施設とする世界に開かれた国際的な共同利用・共 同研究拠点であり、基礎科学やその応用研究を推進して人類の知的資産の拡大に貢献しています。また、総合 研究大学院大学の基盤研究機関として、加速器科学の推進及びその先端的研究分野の開拓を担う人材を養成し ています。

KEK における研究、技術開発、共同利用・共同研究実験などの活動を環境負荷の側面から見ますと、エネルギー 利用の大部分が大型加速器本体とその付帯設備及び大型コンピュータ等を稼動させるための電力であることが大 きな特徴となっています。このような背景を鑑み、地球温暖化対策、省エネルギー対策などの具体的な環境配慮 活動として、エネルギーの高効率利用技術の実践とその技術の開発を中心に、教職員の環境保全、省エネルギー に対する意識を向上させつつ取り組みを行っています。KEK では 2006 年度に環境配慮方針の策定を行い、環境 マネジメントシステムの構築を進めました。その後、環境・地球温暖化対策推進会議や同連絡会の設置などを経 て、2007 年度には「機構における地球温暖化対策のための計画書」を策定しました。

この計画書では、

1. 加速器及び実験装置の稼働よる、電力などのエネルギー資源の使用により排出される CO2の削減に関して、

「〔投入エネルギー〕対〔研究、教育等の成果〕の効率の向上」

2. その他の一般電力などのエネルギー資源を使用する際に排出される CO2削減に関して、「2012 年度までに

2006 年度比 5% 削減という数値目標を設定」

という2 つの大きな目標を掲げました。

これらの目標を達成するため、具体的な「省エネルギー対策アクションプラン」を毎年度策定し、年度末には、 その達成状況を評価し、次年度の計画に反映させています。さらに、加速器などの運転におけるエネルギー利 用計画及びその効率的運用に関する年次計画を策定し、実効力のあるエネルギー管理を行っています。

1 番目の目標に関しては、電力消費を抑制しつつ、多くの研究成果を引き出すための努力として、エネルギー 利用の高効率化を目指す基盤技術の開発と装置の改善を一貫して実践してきました。現在建設中の SuperKEKB 加速器においては、ビーム粒子束を数十ナノメートルの厚みにすることにより、投入エネルギーに対して前人未到 の高い効率で加速粒子の衝突事象を起こすことを可能にし、さらに、高頻度事象を計測する粒子測定技術を開 発、導入します。また、加速器リングに設置する電磁石については旧 KEKB 加速器の電磁石を可能な限り再利用 しています。一方、将来計画のプロジェクトであるエネルギー回収型リニアック(ERL)や国際リニアコライダー(ILC) においては、電磁石、高周波加速装置ともに徹底した超伝導化を行い、エネルギー負荷低減を目指した加速器 の開発研究を行っています。

2 番目の目標に関しては、エネルギー使用量の 0.5% に相当する額を省エネルギー対策に投資する「省エネ推 進経費(省エネファンド)」を創設し、これを継続するとともに、省エネパトロールを実施するなど、教職員が一 丸となって環境負荷低減に対する積極的な取り組みを進めています。このような取り組みにより、6 年間で研究

設備以外の一般電力などの使用による CO2排出量について、建物面積は増加しているにもかかわらず 2006 年度

(5)

トップメッセージ

さて、2013 年 5 月 23 日、KEK と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で運営する大強度陽子加速器施設 J-PARC のハドロン実験施設において、放射性物質がビーム取り出し装置から施設内に漏えい、さらに、事故後 に施設建物の排風ファン稼働という措置を行ったため、放射性物質が施設外にも漏えいしたことが明らかになり ました。

事故を起こしたハドロン実験施設は KEK 所掌の施設であり、その建設・運転・管理は KEK が全責任を負って います。この事故は、ビーム取出装置の誤作動に端を発すると考えられますが、異常検知後のビーム運転再開、 排気ファンの作動など、KEK 職員の判断・指示上のミスが重なり、管理区域内作業者の内部被ばくと放射性物 質の漏えい事故を生じさせました。その結果、近隣住民の皆様だけでなく、広く国民の皆様に対して、大変なご 心配とご不安を与える事態となりましたことを、謹んで深くお詫び申し上げます。

KEK はこの事故を非常に重く受け止め、事故の詳細な経緯を明らかにして説明責任を果たすと同時に、各種安 全管理総点検、改善事項の検討、事故発生防止のみならず、それに起因する今回のような二次的事故の防止対 策について有識者会議を立ち上げ、現在早急に安全管理体制を含めた改善策をまとめております。具体的な取り

大学共同利用機関法人

高エネルギー加速器研究機構 機構長 組みとして、「KEK 近隣の住民の皆様への安全について の説明会」、「KEK 敷地境界の複数測定点における放射 線量のリアルタイム公表」などを実施しました。

これらの活動を通して、KEK 近隣住民の皆様をはじめ 国民の皆様のご理解と信頼が得られますよう、今後とも 機構を挙げて取り組んで参ります。KEK は、今後も大学 共同利用機関として、他研究・教育機関や産業界とのさ らなる連携はもとより、教育を含めた社会への貢献に努 め、環境に対する負荷を最小限にとどめつつ、最大限 の研究、教育成果を得るための努力を継続して実践して いく所存です。本報告書により KEK における環境への取 り組みを地域社会の皆様はもとより、広く国民の皆様に ご理解いただければ幸いです。

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KEK 2012 ハイライト

KEK における 2012 年度の研究ハイライトを紹介します。

ヒッグス粒子の発見

2012 年 7 月 4 日に大きな新発見のニュースが流れました。スイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機関 (CERN)に建設した大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider : LHC)での国際共同実験アトラスと CMS の 2 グループが、質量 126 GeVと、陽子の約 130 倍重い新粒子を発見したのです。アトラス実験では、KEK と日 本の 15 大学からの約 110 人の研究者が実験を進めています。その後に取られたデータを詳細に解析した結果、 この新粒子が提唱以来 50 年近くの間、様々な実験で探されてきたヒッグス粒子であることがほぼ確定しています。 宇宙が何で出来ていてどんな力が働いているかを理解するのが素粒子物理学です。私たち人間も原子でできて いますが、原子は更に小さなクォークや電子などからできており、総合して素粒子と呼んでいます。素粒子間の 力をゲージ相互作用という統一的な考え方で説明するのが、現代の素粒子の「標準理論」であり、様々な実験結 果をうまく説明できていました。しかし、この理論では、全ての素粒子は質量がゼロで光速で飛び回っていなく てはならず、それでは我々の宇宙は誕生できません。ヒッグス氏らによって提案されたアイデアは、宇宙全体に 満ちているヒッグス場の作用によって質量が生まれてくるというものでした。そのような場があるとすれば、未発 見の粒子が存在することが予言され、それがヒッグス粒子です。

LHC とそこでの 2 つの実験は、標準理論が正しければこのヒッグス粒子を必ず見つけられるように設計しまし た。ヒッグス粒子の質量は陽子の 100 倍から1,000 倍ぐらいの間にあると考えられていたので、これを作り出す には巨大な加速器が必要です。LHC は周長 26.7 km のほぼ円形の加速器で、光の速さの 99.999997% まで加速 した陽子同士を衝突正面衝突させ、重心系エネルギー 8 TeVという人類が到達できる最高エネルギーで実験を進 めています。CERN は欧州の国際研究機関ですが、LHC の建設は日本・米国等の国も参加した国際事業になりま した。約 15 年の年月をかけて建設を進め、2009 年 11 月から陽子・陽子の衝突実験が始まりました。

図 1:アトラス測定器。世界 38 ヵ国の約 3000 人の研究者が進めている国際共同実験。(©ATLAS/CERN)

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KEK 2012 ハイライト

実は衝突実験を始める直前の 2008 年 9 月に、LHC で大きな事故が発生しました。加速器に並んでいる約 1,200 台の超伝導双極電磁石の 1ヶ所に接続不良があり、そこから発熱放電して容器に穴があき、冷却用のヘリウムガ スが大量流出するとともに数十台の磁石が破損しました。幸い誰も怪我をしなくて済みましたが、そこからの復 帰と、二度と事故を起こさないようにするためのたくさんの対策を行った上で、実験が始まりました。2009-2012 年の運転では、衝突エネルギーは設計値の約半分での運転(重心系エネルギーで 7-8 TeV。設計値は 14 TeV)で あり、 完全復帰とはいえませんでしたが、それでも、設計以上の輝度を出すことに成功し、今回のヒッグス粒子 発見になりました。2013 年から LHC 加速器の運転を停止し、設計エネルギーまでエネルギーを上げられるように、 改善作業を進めています。2015 年からはより高いエネルギーでの衝突が可能となり、今回発見したヒッグス粒子 が標準理論の予想そのままの性質の粒子かどうかの精査と、新しい粒子の発見を進めて行きます。

図 2:2 光子事象の不変質量分布(Phys. Lett. B 716 (2012) 1-29 図 4 をもとに調製)。

赤矢印の位置、質量 126 GeV 付近にピーク構造が見え、これがヒッグス粒子発見のひとつの証拠となった。

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KEK 2012 ハイライト

胃がんを引き起こすピロリ菌由来の発がんタンパク

質の立体構造解明

全世界のがん死亡原因の第二位を占める胃がんは、毎年約 70 万人もの命を奪っています。中でも日本は胃が んの最多発国で、予防や治療に関する研究が盛んに行われています。胃がんの発症に重要な役割を担うピロリ 菌は、世界人口の半数以上が感染していると言われています。そして近年、ピロリ菌が産生するタンパク質「CagA」 が、胃の細胞内に侵入することでがんの発症を誘導することが明らかになってきました。

CagA が「がんタンパク質」として働くための分子機構を明らかにするため、産業技術総合研究所・バイオメディ シナル情報研究センターの千田俊哉主任研究員(現 KEK・物構研・構造生物学研究センター センター長)と東 京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授のグループは、KEK の放射光科学研究施設において、X 線結晶構造 解析の技術を駆使して CagA の立体構造を調べました。CagA は約 1,200 個のアミノ酸が一本鎖に繋がり、折り たたまれてできた大きなタンパク質です。このアミノ酸の配列を調べていくと、タンパク質の端である C 末端領 域に CM モチーフと EPIYA モチーフと呼ばれる特徴的なアミノ酸の繰り返し配列が存在していました(図 1)。

CagA は、以下のような仕組みで胃がんを引き起こすと言われています。ピロリ菌内で産生された CagA は、

図 2:ピロリ菌 CagA による細胞内シグナルの撹乱 ( 東京大学プレスリリースより )

胃上皮細胞に感染したピロリ菌は、CagA を産生し宿主細胞に注入する。細胞内に侵入した CagA は細胞膜内面に分布する ホスファチジルセリンと結合して膜局在に局在する。その後、PAR1との結合によって PAR1 のキナーゼ活性を抑制する(図左)。 一方同時に CagA はチロシンリン酸化修飾を受けた後、SHP2 との結合により SHP2 を異常活性化する(図右)。これらの細

ピロリ菌の持つ微小な注射針のような装置を通って 胃の細胞内に侵入します。侵入した CagA は細胞 膜の構成成分であるホスファチジルセリンと相互作 用することで、細胞膜の内面に結合します。細胞膜 の内面に結合した CagA は、胃の上皮細胞で働く PAR1という酵素と CM モチーフの部分で結合して、 PAR1 の働きを抑えることで、胃粘膜の構造を破壊 してしまうことがわかっています(図 2 左)。

図 1: CagA の構造模式図

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KEK 2012 ハイライト

同時に CagA は、EPIYA モチーフ中のチロシン残基がリン酸化修飾を受けることにより、ヒトのがんタンパク質 として知られるチロシンホスファターゼ SHP2 と結合できるようになります。SHP2 は CagA と結合すると異常に活 性化され、細胞のがん化につながる異常な分裂・増殖シグナルを発します(図 2 右)。

研究グループは、さらに X 線構造解析により、CagA がどのように PAR1 や SHP2 と結合するのかを詳しく調べ ました。その結果、CagA の約 1,200 個のアミノ酸配列は、これまでに知られているどのタンパク質とも似てい ない新規の立体構造を持つ部分(CagA-N 領域)、CagA 分子の中央部には多数の塩基性アミノ酸が集まってプラ スの電荷を持つ部分(塩基性パッチ)、そして状況に応じてその構造を自由自在に変化させることができる「天然 変性領域」と呼ばれる部分(CagA-C 領域)から構成されていることがわかりました。この塩基性パッチは、マイ ナス電荷を持つホスファチジルセリンと静電的な相互作用をすることで、細胞膜と結合していることが分かりまし た(図 3)。

「天然変性領域」は、構造を変えながら様々なタンパク質と結合するため、一般的に細胞内の情報伝達に重要 な働きをすると考えられています。実際、CagA においても、PAR1と結合する CM モチーフ、SHP2 と結合する EPIYA モチーフはこの天然変性領域にあります。この領域を詳しく調べていくと、その一部が、決まった構造を持

つ CagA-N 領域の一部と相互作用をすることで、投げ縄状のループが形成されることが明らかになりました(図 4)。

図 4(左): CagA の C 末端に見出された投げ縄構造

CagA-C 領域の一部(赤)が構造領域である CagA-N 領域の一部(青)とヘリックスバンドル構造をとることで、投げ縄状のルー プ(投げ縄構造)が形成されると考えられる。この部分に、CM モチーフ、EPIYA モチーフが含まれる。

図 5 (右):細胞内膜上に形成されると考えられる複合体

投げ縄構造を持つ CagA と PAR1、SHP2 が複合体を形成する。この結果、PAR1 の活性は阻害され、SHP2 は異常に活性化 されると考えられている。

この投げ縄状の構造が形成されると、CagA と PAR1 や SHP2 との間で形成される複合体が安定化し、より強いがん化シグナ ルが生成されることが明らかになったのです(図 5)。このこと から、決まった構造を持つ CagA-N 領域と自由に構造を変化さ せることができる CagA-C 領域との間で生じる相互作用が、発 がん活性を上げるための分子内スイッチとして働くのではないか と考えられます。

CagA と PAR1、SHP2 との相互作用、そしてその相互作用を より強くする投げ縄構造は、ピロリ菌による胃がん発症の重要 な鍵を握っています。分子レベルでこの仕組みが明らかになっ たことは、ピロリ菌が引き起こす胃がんの発症を抑える薬の開 発につながると期待されます。

図 3: CagA と細胞膜の相互作用

ドメイン II 内の塩基性パッチが細胞膜の内側の フォスファチジルセリン(PS)と相互作用すると考 えられる。

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KEK 2012 ハイライト

SuperKEKB

KEKB は電子と陽電子のビームを周長 3 km のリングで光速近くまで加速し、衝突させる加速器です。衝突反応 により生成される B 中間子対の崩壊を Belle 検出器で精密に測定し、素粒子物理学の実験的研究を行っています。 2001 年には B 中間子と反 B 中間子の崩壊時間差の測定により B 中間子系での CP 対称性の破れを実証し、小林・ 益川理論を実験的に検証しました。

実験に必要な膨大な量の B 中間子対を作り出すところから、KEKB は「B ファクトリー(B 中間子工場)」と名付 けられています。KEKB は 2001 年以降、2010 年 6 月の運転終了時まで世界最高のルミノシティ(注 1)を誇って いました。現在は、素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える物理法則の解明を目指し、KEKB を高度化 してルミノシティを 40 倍に高める SuperKEKB の建設を行っています。

SuperKEKB では電子リング及び陽電子リングを周回するビームを低エミッタンスのビーム(サイズが小さく、か つ方向のそろったビーム)にし、さらに衝突点において超伝導電磁石を用いて垂直方向約 50 nm、水平方向約 10 µm にまで小さく絞りこみます。また、両リングに蓄積されるビーム電流を KEKB の約 2 倍に増強します。低エミッ タンス化及びビーム電流倍増を実現するため、リングを構成する電磁石システム、真空システム、高周波システム、 ビームモニタ及び制御システム等の大規模な改造を行っています。

また、入射器で生成される陽電子ビームのエミッタンスを陽電子リングに入射する前に十分を下げておくために、 新たに周長 135 m の陽電子ダンピングリングを建設しています。電子・陽電子線形入射器においても、新たな電 子銃の導入や陽電子生成・収束システムの改良等を進めています。

KEKB リングに配置されている 3,000 台以上の電磁石はビームを適正な軌道に保ち、広がらないよう収束させ、 ビームの光学補正を行う役割を担います。KEKB の電磁石を可能な限り再利用しつつ、SuperKEKB の新しいビー ム光学設計にもとづき電磁石の追加、交換、配置変更等を行っています。これまでに、陽電子リングアーク部 の偏向電磁石約 100 台を、KEKB の 1 m 長のものから、新規製作した 4 m 長のものに全数交換しました(図 1)。 また、陽電子リングのウィグラー電磁石セクションのレイアウトを一新するとともに、電子リングにもウィグラー セクションを新設しました(図 2)。さらに、衝突点の両側約 300 m の区間は全く新しいビームラインとなるため、 全面的な撤去・更新を行っています。電磁石用の電源についても、電磁石台数の増加に対応し、また電磁石毎 の独立な制御を行うために新規に多数、製作しています。

図 2:電子リングに新設したウィグラー電磁石   壁奥側に見えるのは ARES 型加速空洞 図 1:陽電子リング(2 本のリングのうち右側)に

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KEK 2012 ハイライト

ビームは超高真空に保たれたビームパイプの中に蓄積されます。 SuperKEKB の陽電子リングにおいては電子雲不安定(注 2)への 対策として、ビームパイプの大部分をアンテチェンバー型ビームパ イプ(図 3)に交換します。電子リングにおいても、ウィグラー区 間や衝突点近傍区間のビームパイプは発熱への対策や真空度向 上を目的としてアンテチェンバー型に交換します。ビームパイプの 製作後、二次電子放出を抑制するためのパイプ内面への窒化チタ ンコーティングや、脱ガスのためのベーキング等の表面処理を行 います。KEKB 大穂実験棟内に表面処理のための設備を整備しま した(図 4)。この設備を用いて 1,000 本以上のビームパイプを 2 年間かけて処理します。現在は毎週 15 本以上のペースで量産が 進んでおり、これまでに半数以上が終了しました。処理を終えた ビームパイプはトンネル内に順次、設置しています。

衝突点の超伝導電磁石は、ビームを強く絞るための強力な磁場 を高精度につくることが要求されます。電磁石先頭部が Belle II 測 定器(Belle からアップグレードされて Belle II になる)に入り込む形 で、非常に狭いスペースに 8 台の主四極コイル及び光学補正用の 40 台以上の補正コイルが配置されます(図 5)。KEK 内で製作し た試作器を低温で励磁試験し、運転に必要な電流までクエンチ 無く到達するなど、良好な結果が得られました。補正コイルは米 国ブルックヘブン研究所の協力を得て設計・製作を進めています。 実機の電磁石・クライオスタットシステム全体の製作は昨年度か ら開始しました。

図 3:アンテチェンバー型ビームパイプ

ビームパイプ両側につば状のスリット構造を持 つ。ビームからの放射光はこのスリットに沿って、 ビームから離れた場所まで引き出される。

図 4:大穂実験棟に整備したビームパイプ処理 設備。上層階(B2)はベーキング及び横型コーティ ング装置、中層階(B3)は組立て及び検査、下 層階(B4)は保管場所として使用。手前側、B2 から B4 まで貫通して 5 基の縦型コーティング 装置が設置されている。

(12)

KEK 2012 ハイライト

高周波加速システムは、KEKB で使用した超伝導空洞(図 6)や ARES 型常伝導空洞を再利用しますが、ビーム 電流を倍増するために、クライストロンや電源などの高周波源を増設するとともに、空洞の配置換え及び入力 結合器の交換、冷却系の増強などを行っています。また、高精度の高周波制御を行うために、新たに開発した µTCA 規格の FPGA ボードを搭載した新型高周波制御システムへの更新や光伝送高周波基準信号分配システムの 導入を進めています。

ビーム精密計測システムの更新・改良も進めています。ビーム位置モニタについてはアンテチェンバー化に対応 した新たな検出器への交換及びターン毎測定システムの導入を行います。ビームサイズ測定は放射光の干渉を利 用した従来の測定方法に加え、より小さなサイズを測定できる X 線イメージングを用いた測定器を開発していま す。バンチ毎フィードバックシステムは KEKB の実績をベースに、新しい制御ボードを採用して構築します。また、 加速器制御・安全システムについても、より高速かつ信頼性の高いものとするため、計算機やネットワークの更 新等を進めています。 

陽電子ダンピングリングは震災のためトンネル建設の着工が半年遅れましたが、すでにトンネル工事が完了し(図 7)、2013 年度に電源棟及び機械棟の建屋建設及び冷却系等の設備整備を行います。また、ダンピングリング用 の電磁石及び電源、ビームパイプ、加速空洞等の加速器機器の製作及び試験も並行して進めており、2014 年度 にトンネル及び電源棟内に設置する予定です。

以上のように、SuperKEKB 建設は順調に進行しており、2013∼2014 年度も引き続き、機器の製作、試験、設 置及び立ち上げ等を行って、2015 年 1 月にビーム運転を開始する予定です。ビーム運転の第一段階は Belle II 測 定器及び超伝導電磁石を外した状態で、低エミッタンスビーム調整や真空コンディショニング等の加速器調整を 行います。その後、Belle II 測定器及び超伝導電磁石を設置して、衝突点での絞り込みやビーム衝突等の調整を 行い(第二段階)、最後に Belle II 最内層のバーテックス検出器を装着して物理実験(第三段階)を開始します。

図 7:陽電子ダンピングリングトンネル建設中の様子 (現在はすでに完成)。

図 6:KEKB 超伝導加速空洞

高い加速電圧で大電流ビームを安定に加速する。

(注 1)ルミノシティ

衝突型加速器の衝突性能を表す指標。ルミノシティに反応断面積(定数)を乗じた値が 1 秒間あたり衝突反応の起こ る回数。 

(注 2)電子雲不安定

(13)

KEK 2012 ハイライト

国際協力による衝突型・線形加速器計画:

International Linear Collider(ILC)

    図 1:ILC 加速器の概観。(©Rey.Hori)

右側に超伝導・直線型加速クライオモジュール本体。 左側に高周波電力源。

図 2:ILC 加速器レイアウト。中央にビーム衝突点。

図 3:ILC ビームの加速プロセス:電子 / 陽電子源、 ダンピングリング、主線形加速器、ビーム最終収束。 1. ILC 計画の概要・特色

国際リニアコライダー(ILC)計画は、全世界的な国際協力 により、エネルギーフロンティアを担う電子・陽電子衝突実験 を、超伝導技術を駆使した直線衝突型加速器によって実現し ようとする計画です。全世界的国際協力の枠組みの中で、素 粒子物理学の国際的な拠点を日本がホストし、実現すること が期待されています。

全長 30 km に及ぶリニアコライダーによる衝突エネルギー は 250 GeV から 500 GeV 領域を段階的に実現し、将来は全 長 50 km にまで拡張することによって 1,000 GeV 領域までの 拡張性を視野に入れています(図 1,2)。生成された電子、陽 電子は、一旦、ダンピングリングを周回する過程で、非常に 平行度の高いビーム(低エミッタンスビーム)に調整された後、 30 km に及ぶ地下トンネルの両端から、超伝導技術を駆使し た主線形加速器によってエネルギー効率良く加速されます(図 3)。中央のビーム衝突点では、電子、陽電子ビームをナノメー トル(nm:1 m の十億分の一)レベルにまで絞り込み、正面 衝突させます。直線型の加速器の大きな特色は、円形の加 速器では不可避な放射光放出に伴う加速限界がなく、超伝導 加速空洞技術と合わせ、電力を節約しつつ、エネルギーフロ ンティアを担う力持ちでエコな加速器となります。そして、電 子・陽電子(単一素粒子同士の)衝突の特色を活かし、クリー ンで明確な実験を実現します。リング型コライダーより大き なエネルギー拡張性を持つリニアコライダーは、今後長期間 にわたり最先端の研究基盤施設として活躍する事が期待され ています。

昨年、LHC で発見されたヒッグス粒子( 125 GeV)を、最 適なエネルギー範囲で精密に研究し、宇宙初期における素 粒子の成り立ち、質量が生まれた背景、メカニズムを解明す るとともに、宇宙の大半を占めると思われている暗黒物質等、 ILC のエネルギースケールで期待される新粒子・新現象の探 索や研究を進めます。これにより、「宇宙の物質構成の仕組 み」、「力の大統一」、「自然界の新しい対称性」、そして「宇 宙初期の物理法則の知見」が深まり、宇宙の進化の解明に 大きく貢献することが期待されています(図 4)。

(14)

KEK 2012 ハイライト

2. ILC 実現に向けた取り組み

国際将来加速器委員会(ICFA)の枠組みのもとで設 立された ILC 国際設計チーム(ILC-GDE)が、5 年間 にわたる「技術設計」活動の成果として、2012 年末に ILC の技術設計書(TDR)を完成させました(図 5)。そ して、2013 年 2 月には、「設計から実現」を目指した 新たな国際協力の枠組みとして、リニアコライダー・コ ラボレーション(LCC)が発足しました(図 6)。今後数 年間で加速器・実験装置、施設・設備、研究所組織 などの詳細設計を行うとともに、具体的な実施計画 を策定することになります。次いで、国家間レベルで の国際合意に基づくILC 国際研究所を設立し、建設 に向けた準備を整える事が構想されています。ILC 建 設には 10 年を要し、将来のエネルギーアップグレード を含めると計画実施期間が四半世紀を超えるグロー バルプロジェクトとなります。

日本の高エネルギー物理学研究者会議は、昨年 3 月に「日本が主導して電子・陽電子リニアコライダーの 早期実現を目指す」方針を確認し、10 月には「衝突エ ネルギーを 250 GeV から段階的に 500 GeV へ増強す るシナリオに沿って ILC を日本に建設すること」を提

図 5:GDE 活動と技術設計書への道程

図 6:「設計から現実へ」向けて発足した国際協力の枠組み と KEK の協力。

案しています。今年まとめられた CERN 理事会による欧州戦略には、「日本のコミュニティによる ILC 建設の提案 を歓迎し、欧州グループは参加を強く希望する」と記され、米国エネルギー省(DOE)及び米国国立科学財団(NSF) の諮問委員会は「日本がホストする ILC をエネルギーフロンティアの最重要施設にランクする」と報告しています。 また研究者コミュニティも、積極的な参加・貢献の意思を表明しています。国際プロジェクトとして日本に ILC を 建設することが、世界の高エネルギーコミュニティの合意になりつつあります。

ILC は 2020 年代後半の稼働開始を目指しています。そのためにはまず、KEK、CERN、Fermilab 等の世界の主 要加速器研究所が連携した国際準備組織が必要です。ICFA の下に新たに発足した LCC は、活動の中核となり、 国際準備組織を率いて、加速器及び測定器の詳細設計、建設計画の策定、超伝導加速器技術実証試験、性能 を保ちつつコスト削減を目指した工業化技術開発等を推進します。また、候補地を1ヶ所に絞り込み、地形に合 わせた施設・アクセスの詳細設計、環境アセスメント等、日本での建設を前提とした準備作業を進めるとともに、 加速器建設とプロジェクト運営の母体となる国際組織(仮称 ILC 研究所)の制度設計と国際準備組織からの移行 計画策定等を行います。これらの準備を今後の数年間で整え、政府間合意が得られた時点で、プロジェクト開始 を目指します。

(15)

KEK 2012 ハイライト

図 8:ATF2 最終収束点・ビームサイズ絞り込みの進展。

3. 技術開発の進展

次世代リニアコライダー実現に向けた技術開発は 1980 年代に始まっています。KEK ではリニアコライダー に不可欠な極小(ナノ)ビームの生成とその制御を研 究する先端加速器試験施設(ATF)を1990 年代に建設 し、ビーム平行度を高めるダンピングリングの技術開 発研究を進めてきました(図 7)。また、2008 年には 衝突点へのビーム輸送を模擬する ATF2 計画をスター トさせ、ビーム衝突点でナノメートルレベルの極小ビー ムサイズの実現に向けた技術開発が進展しています。 これまでに ATF2 として、1.3 GeV のエネルギーで 60 nm を実現しています。これは、250 GeV の ILC ビー ムでは 10 nm に相当し、ILC が求める 5 nm にあと一 歩のところまで迫っています(図 8)。

2005 年からは超伝導リニアック試験施設(STF)を 建設し、欧米と協力する超伝導加速技術開発拠点と して超伝導加速器研究開発を推進してきました。1.3

年 企業(製造) 研究所(表面処理・試験) 2006 ACCEL, ZANON DESY

2012 RI, ZANON, AES, MHI, HITACHI DESY, JLab, Fermilab, KEK, Cornell-U

図 10:KEK における超伝導加速空洞製造施設(CFF)

GHz 超伝導加速空洞(図 9)の開発では、ILC が求め る空洞性能を達成できる企業及び研究所の協力の輪 が大きく広がっています(表 1)。さらに、KEK では、 2010 年からは超伝導加速空洞製造施設(CFF)を立ち 上げ、超伝導加速空洞製造・量産技術を産業界との 協力によって、技術基盤の向上、施設の充実を計って います(図 10)。

図 9:ILC(1.3 GHz)9 連・超伝導加速空洞(KEK 型)。

表 1:ILC 超伝導加速空洞の製造・表面処理・評価試験(35 MV/m)が実証された企業・研究所(協力)の進展。

図 11:STF 国際協力によるクライオモジュー ルの組み立て・性能実証試験中の様子。

またシステム開発における国際協力の代表的な成 果として、2010 年には超伝導加速空洞システム実証 試験として、日米欧がそれぞれの特色を持った超伝導 加速空洞を持ち寄り、KEK で国際クライオモジュール (S1-Global Module)として組み上げ、国際協力による 共同作業、システム運転を実証しています(図 11)。

(16)

KEK 2012 ハイライト

4. ILC 計画の波及効果、今後の展望:

ビッグバン前後の初期宇宙の進化を解き明かすには、究 極の物理法則を理解しなくてはなりません。ILC はヒッグス 粒子の研究を通じて宇宙の構造(真空の構造)を明らかにし、 宇宙論の進展に大きく貢献します。またILCの精密測定によっ てダークマター粒子が発見されて、その性質が明らかにされ れば、宇宙の大規模構造形成の全容解明へと進展します。

ILC 開発の過程で培われた高度な加速器技術、特に超伝 導加速技術と超低エミッタンスビーム(そしてナノビーム)の生 成と制御は、大強度中性子源や次世代高輝度放射光源の開 発に欠かせない基幹技術となり、物性研究、地球科学、核 変換(ADS)等の多様な分野の発展に貢献します。小型 X 線 源等、新しい量子ビームの開発において、ILC の加速器技術 がすでに応用展開されています(図 12)。中性子や放射光の 利用は、物性研究、生命研究等の基礎科学分野にとどまらず、 材料開発や創薬等においても多大な貢献をもたらします。ま た、ILC 測定器のために開発された高精細粒子検出器は、放 射光施設や中性子施設における X 線及び中性子のイメージ

表 2:DESY/KEK における超伝導加速実証成果 実証項目 開発目標 達成値 DESY/FLASH 実験 :

パルス電流 9 mA 9 mA 空洞電場こう配 31.5 MV/m > 30 MV パルス内電場平坦度 2% dV/V <0.3% dV/V

安定性 0.1% rms < 0.15 % KEK/STF- 量子ビーム実験 :

パルス電流 10 mA 10 mA パルス時間幅 1 ms 1 ms

2011 年度からは日本国内候補地の地質調査、研究所の立 地に関する調査を積み重ねています。

国際的な超伝導加速器技術開発状況として、2011 年には ドイツ・DESY(FLASH)で ILC 要求を満たす超伝導加速器に よるビーム加速に成功、2012 年には KEK において ILC 仕様加 速空洞によるビーム加速実証実験(量子ビーム実験)に成功し (表 2, 図 12)、さらに ILC 主線形加速器・フルサイズ・モジュー

ルによるビーム加速実証試験準備が進行中です(図 13)。 2012 年には超伝導加速空洞の製造成功率が、TDR での 達成目標としていた、90%(@35 MeV/m 20%)に達していま す。以上を総合し、超伝導加速空洞による加速器技術開発 レベルが、ILC を国際的に提案できる段階に達しています。 これらの成果を基に、GDE は 2012 年末に TDR を完成させ ています。

図 12:超伝導ビーム加速及び小型 X 線源・実証実 験に成功した『量子ビーム』ライン。

図 13:『量子ビーム』から『ILC 主加速器モジュール』 実証実験への進展(整備中)。

ング技術を格段に進歩させています。

(17)

(1)KEK は人類の知的資産の拡大に貢献します

KEK は自然界に働く法則や物質の基本構造を探求することにより、人類の知的資産の拡大に貢献します。そ のために素粒子・原子核に関して、また、生命体を含む物質の構造・機能に関して高エネルギー加速器を用いた 実験的研究や、理論的研究を推進します。

(2)KEK は大学共同利用機関法人です

KEK は大学共同利用機関法人として、国内外の研究者に共同利用の場を提供し、加速器科学の最先端の研究 や、関連分野の研究を発展させます。

(3)KEK は世界に開かれた国際的な研究機関です

KEK は世界の加速器科学の研究拠点として、国際共同研究を積極的に推進します。また、アジア・オセアニア 地域に位置する研究機関として、諸機関との連携協力を重視し、同地域における加速器科学の中心的役割を果 たします。

(4)KEK は教育協力・人材育成を進めます

大学院などへの教育協力を行い、加速器科学分野の人材育成の活動を行います。また、総合研究大学院大学 の基盤組織として、加速器科学の推進及びその先端的研究分野の開拓を担う人材を養成します。

機構の役割と組織

機構の役割と組織について紹介します。

(18)

機構の役割と組織

KEK の目指すもの

KEK では、最先端の大型粒子加速器を用いて、宇宙の起源、物質や生命の根源を探求しています。研究者の 自由な発想による「真理の追究」を目指して研究開発を推進しています。

この世界にある物質は、分子や原子の組み合わせからできています。その原子は原子核と電子から、原子核 は陽子と中性子から構成されています。さらに陽子と中性子の中を探ると、最も小さな構成要素(素粒子)である 「クォーク」にたどり着きます。一方、分子や原子の無数の集まりは私達の周りの様々な物質を構成し、その最も 進んだ一形態としての生命体にまで行き着きます。KEK は加速器を用いて、素粒子や原子核の研究から原子や分 子レベルでの物質の構造や機能の研究、生命体の生命活動の研究まで、幅広い基礎科学の研究を行っています。

高エネルギー加速器とは、電子や陽子などの粒子を、ほぼ光の速さまで加速して、高エネルギーの状態を作り 出す装置です。この高エネルギー状態から作られる素粒子の世界を研究すると、誕生直後の宇宙の様子を探るこ とができます。また、加速器が作る光や中性子、ミュオンなどの量子ビームは、倍率の高い顕微鏡として、これ までに見ることができなかった物質の構造や、生命活動の研究を行うことができます。

素粒子・原子核の世界の研究

宇宙は約 137 億年前(± 2 億年)のビッグバンによって始まったと考えられています。宇宙が出来た当初は素粒 子の世界でした。望遠鏡や人工衛星で宇宙を眺めるのに対し、KEK は加速器を用いて宇宙の初期状態を再現す ることで宇宙の研究を行います。

物質の構造や機能の研究

電子加速器で電子の軌道を曲げたときに生じる「放射光」という強い光や、電子を金属標的に衝突させて発生 させる「陽電子」、陽子加速器で陽子を金属標的に衝突させ発生させる「中性子」や「ミュオン」という粒子を試 料に照射し、さまざまな物質の構造や機能を原子や分子のレベルでの詳細な観察をすることで、物理学、化学、 生物学、工学、農学、医学、薬学など幅広い分野の研究を行います。

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機構の役割と組織

長基線ニュートリノ振動実験(T2K)の概念図

機構の組織

研究所・研究施設紹介

■ 素粒子原子核研究所

素粒子や原子核のふるまいを探るため、素粒子物理学・原子核物理学の研究を実験、理論の両面から幅広く行っ ています。これにより、私たち人間を含むありとあらゆる物質を形作る素粒子をはじめとした極微の世界の謎を 解明するとともに、現在の宇宙がどのように生まれたのかという根源的な謎に挑んでいます。

■ 物質構造科学研究所

物質構造科学研究所は、加速器から発生する放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子を利用し、 原子レベルか ら高分子、生体分子レベルにいたる幅広いスケールの物質構造と機能を解明し、 物質科学・生命科学の基礎研 究から応用研究をしています。また、ビーム生成、利用技術などの開発研究を通し、幅広い物質科学の発展に 貢献しています。

(20)

機構の役割と組織

■ J-PARCセンター

大強度陽子加速器施設(J-PARC)は KEK と独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で運営する加 速器研究施設です。東海キャンパスに設置されており、現在およそ400 名のセンター員が素粒子物理、原子核物理、 物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の研究を行っています。

世界最高クラスの陽子ビームを用いて生成する多彩な二次粒子、三次粒子(中性子、ミュオン、K 中間子、ニュー トリノなど)が利用できる施設として、T2K 実験( 東海−神岡間長基線ニュートリノ振動実験)をはじめとする多く の実験を支えています。

■ 加速器研究施設

KEK で行われている全ての研究活動の基盤となっているのが加速器です。加速器研究施設は KEK の加速器の 設計・建設・運転維持・性能向上を通じて、素粒子・原子核・物質・生命等の加速器共同利用実験の場を、日本 と世界の研究者に提供しています。

J-PARC の加速器施設と実験施設

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機構の役割と組織

スーパーコンピュータシステム A J-PARC ニュートリノ実験用超伝導一次陽子ビームライン

共通基盤研究施設では、加速器を使った多彩な研究計画の円滑な遂行のための、放射線防護、環境保全、 コンピュータ、超伝導・低温技術、精密加工技術等に関する基盤的研究を行うとともに、先端的な開発研究を行っ ています。また、これらに関連する高い基盤技術を用いて放射線・環境安全管理、コンピュータやネットワーク の管理運用 、液体ヘリウム等の供給、機械工作等の研究支援業務を行っています。

これらの開発研究及び支援業務を行うため、放射線科学センター、計算科学センター、超伝導低温工学セン ター、機械工学センターが置かれ、機構の研究支援の大きな柱となっています。

(22)

機構の役割と組織

基礎データ

合計:691 名 合計:56 名

役員 7 名 加速器科学専攻 11 名

所長・施設長 4 名 物質構造科学専攻 6 名

教員 358 名 素粒子原子核専攻 39 名

技術職員 160 名

事務職員等 162 名

■ 職員数(2012 年 4 月現在)    

■ 総合研究大学院大学学生数(2012 年 4 月現在)    

■ 予算額(2012 年度)〔単位:百万円〕    

■ 面積(2012 年 4 月現在)    

■ 沿革    

収入:59,557 支出:59,557

運営費交付金 49,411 業務費(教育研究経費) 46,717

施設整備費補助金 3,845 施設整備費 3,952

産学連携等研究収入及び寄付金収入等 2,402 産学連携等研究経費及び寄付金事業費等 2,402

自己収入(雑収入) 231 長期借入金償還金 3,026

補助金等収入 3,460 補助金等 3,460

国立大学財務・経営センター施設費交付金 107

目的積立金取崩 101

敷地面積 建物面積

つくばキャンパス 1,531,285 m2  184,876 m2

東海キャンパス 106,746 m2 30,619 m2

1955 年 7 月 東京大学原子核研究所設立(東京都田無町 現:西東京市) 1971 年 4 月 高エネルギー物理学研究所設立(茨城県大穂町 現:つくば市)

1978 年 4 月 東京大学理学部付属施設中間子科学実験施設設立(茨城県大穂町 現:つくば市) 1997 年 4 月 高エネルギー加速器研究機構設立(上記の 3 つの組織を改組・転換)

2004 年 4 月 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構発足(法人化) 2005 年 4 月 東海キャンパスの設置

(23)

機構の役割と組織

実績データ

■ 共同利用実験の申請・採択・実施状況    

項目 区分

2012 年度

申請件数 採択件数 実施件数

B ファクトリー実験 - - 1

放射光実験 500 481 877

中性子実験(J-PARC) 86 81 77

ミュオン実験(J-PARC) 47 45 37

ハドロン実験(J-PARC) 7 6 17

ニュートリノ実験(J-PARC) 0 0 1

大型シミュレーション研究 53 53 53

合計 693 666 1,063

■ 2012 年度共同研究者等受入

 〔延人日(実人数)〕

■ 2012 年度外国機関共同研究者受入

 (国・地域別)〔延人日(実人数)〕

■ 2012 年度発表論文数(共同利用・共同研究に基づくものを含む)

論文数

素粒子原子核研究所 392

物質構造科学研究所 607

加速器研究施設 316

共通基盤研究施設 70

(24)

環境方針

環境との共生

KEK の環境配慮への取り組み状況を紹介します。

高エネルギー加速器研究機構 環境方針

◆ 基本理念

高エネルギー加速器研究機構は、研究・教育活動及びそれに伴うすべての事業活動において、地球環境の 保全を認識し、環境との調和と環境負荷の低減に努めます。

以上を念頭に置きつつ、研究・教育活動を積極的に推進するとともに、地球環境を維持・承継しつつ持続 的発展が可能な社会の構築を目指します。

◆ 基本方針

1. 省エネルギー、省資源、廃棄物の削減、放射線及び化学物質管理の徹底等を通じて、環境保全と環境 負荷の低減に努めます。

2. 環境関連法規、条例、協定及び自主基準を遵守します。

3. 環境配慮に関する情報公開を適切に行うとともに、地域社会の一員として地域の環境保全に貢献します。 4. 環境マネジメントシステムを確立し、継続的な改善を進めます。

5. 環境保全の目的及び目標を設定し、教職員の環境意識を向上させ、共同利用研究者、大学院生、外部関 連組織の関係者と協力してこれらの達成に努めます。

環境管理体制

KEK では、以下の組織で環境配慮活動に取り組んでいます。

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(25)

環境との共生

環境目標・計画と達成度

KEK の 2012 年度環境目標・環境計画の達成度を以下に示します。達成度の評価基準は p.23 に示します。

環境保全と環境負荷の低減

環境目標 行動計画 主な取り組み 評価

省エネルギー対策の 推進

年度計画終了時に検証、次年度の計画

を策定 年間使用見込をもって次年度計画を策定 ○

省エネルギー等の教育啓発

電力使用状況をリアルタイムで機構 内へ周知

省エネパトロール 2 回実施

情報の発信

年度計画を HP に掲載するなど周知徹底 施設部 HP に掲載、機構内へ周知 ○

光熱水の使用量を各種会議、HP で公表 施設部 HP、環境報告書で公表 ○

2012 年度の CO2排出量を公表 環境報告書に掲載 ○

実験機器の省エネル ギー、資源の有効活用 の推進

加速器及び実験装置に関する電力などエ

ネルギー資源の使用による CO2の排出

削減に対して、〔投入エネルギー〕対〔研

究、教育等の成果〕の効率の向上

様々な基盤技術の開発と装置の改

善を実践 ○

省エネルギーにつながる実験装置の開

発の促進 ERL や超伝導の技術開発 ○

電磁石、電源その他の機器の再利用、 放射線遮蔽用鉄材料などの実験用材料

や機器の有効利用の促進 積極的に再利用を図っている ○

戦略的な執行を図る 各研究所、研究施設で実施 ○

将来型加速器の電磁石、加速装置等の

超伝導化 ILC、ERL 基礎研究を実施 ○

物品及び役務の調達・ 使用にあたっての配慮

低公害車の導入 普通車購入の際には、グリーン購入法適合車種を購入

自動車の効率的利用 ・公用車等の効率的利用 ・業務連絡バス利用の促進

積極的な公用車の乗り合いを実施 会議等業務連絡バスの利用状況を 発信し、積極利用を呼びかけ

用紙類の使用量の削減

・会議用資料や事務手続の一層の簡素化 ・両面印刷、集約印刷の徹底

・不要となった用紙の裏面利用 ・使用済み封筒の再利用

ペーパーレス会議や両面コピー等 の実施励行により、印刷用紙の使

(26)

環境との共生

環境目標 行動計画 主な取り組み 評価

物品及び役務の調達・ 使用にあたっての配慮

再生紙など再生品の活用、リサイクル可 能な製品の使用

コピー用紙からトイレットペーパー まで用紙類は全て再生紙を使用 文具類等は、再生材使用品若しくは リサイクル可能な製品を購入 納入業者に対し納入時包装の簡略 化、リサイクル対応可能な物の使用 を指導

自動販売機設置の見直し

・設置実態を把握し、更新時にエネルギー     消費のより少ない機種に変更

更新時に省エネタイプを設置 ○

建築物の建築、 管理 等にあたっての配慮

温室効果ガスの排出の少ない空調設備

の導入 更新時に高効率エアコンを採用 ○ 水の有効利用

・感知式の洗浄弁、自動水栓等の設置

利用者の多い場所の給水装置に感 知式の洗浄弁・自動水栓等の設置 ○ 敷地内の環境の維持管理

・枝葉等の再利用、廃棄物の排出削減

剪定した枝葉等を粉砕し敷地内に

敷均 ○

建築物建築等における省エネタイプの建 設機械の使用促進

排 出 ガ ス 対 策 型 建 設 機 械 及 び ディーゼル車排出ガス規制に適合し た車両を使用することを仕様書に明 記

その他抑制等への 配慮

廃棄物の減量

・シュレッダーの使用の抑制 ・トナーカートリッジの回収

・OA機器、家電製品等廃棄物の適正処理

シュレッダーの使用については、機 密文書の処分に限定

トナーカートリッジは全て業者回収 各種廃棄物の処理は、適宜廃棄業 者へ依頼し適正に処理

職員に対する研修等

職員に対する地球温暖化対策に関する研 修の機会、情報提供

・環境配慮に関する研修への積極参加 ・環境配慮に関する情報の提供 ・省エネルギー対策のアイデアを募集

関連の研修会等へ職員が参加 HP や電子メールを活用して情報を 提供

アイデアの募集を実施

評価基準

○ 目標を達成している

(27)

環境との共生

投入量

排出量

2012 年度環境負荷の全体像について以下に示します。

個別の項目の詳細については、次ページ以降に記載しています。

環境負荷の全体像

総エネルギー投入量

電力使用量

都市ガス使用量

石油燃料使用量

CO

2

排出量

一般廃棄物排出量

産業廃棄物排出量

実験系廃棄物排出量

下水道排出量

水資源使用量

※換算係数について

 1.2012 年度の総エネルギー投入量の計算に使用した係数は以下の通りです。   ・電力:9.97 GJ/MWh(昼間)、9.28 GJ/MWh(夜間)

  ・都市ガス:45.0 GJ/ 千 m3

  ・石油燃料(ガソリン:34.6 GJ/kL・軽油:37.7 GJ/kL・A 重油:39.1 GJ/kL)

 2.2012 年度の CO2排出量の計算に使用した係数は以下の通りです。

   都市ガス及び石油燃料は、エネルギー単位(GJ)に換算した後、下記係数をかけて求めています。

  ・電力:0.550 t-CO2/MWh(国が定める 2012 年度報告用代替値)

  ・都市ガス:0.0499 t-CO2/GJ

  ・石油燃料:(ガソリン:0.0671 t-CO2/GJ・軽油:0.0686 t-CO2/GJ・A 重油:0.0693 t-CO2/GJ)

2,555 TJ

GWh

千 m

3

kL

257

1,746

37

千 m

3

298

146 t-CO

2

t

t

t

83

544

14

千 m

3

(28)

環境との共生

エネルギー

総エネルギー投入量 

電力使用量   

都市ガス使用量    

石油燃料使用量   

2012 年度は、257,479 MWh の電力、1,746 千 m3の都

市ガス、34 kL のガソリン、2 kL の軽油、0.29 kL の A 重 油を使用しました。これらのエネルギー投入量を熱量に換 算すると 2,555 TJ(1 TJ = 1,000 GJ)であり、前年度に比べ 60% 増となりました。

2011 年度は、東日本大震災による加速器の運転停止や、 夏の電力不足に対応するため電力使用制限を行ったことに より、電力使用量は大きく減少しました。また、つくばキャ ンパスにおいては、2010 年 6 月末に KEKB 加速器を運転 停止にしたことも使用量減少に寄与しています。

これに比べ、2012 年度は、J-PARC の加速器の運転出 力が増加したために、東海キャンパスの電力使用量が大き く増加しました。

つくばキャンパスでのみ使用しており、使用量は微増し ました。

東日本大震災後、A 重油を燃料とした自家発電設備を 稼働していたため、使用量が増加していました。その必要 がなくなったため、2012 年度は震災前の水準に戻りました。 なお、つくば−東海間を往復する業務連絡バスの燃料は、 請負業者の事業負担であるため考慮していません。

都市ガス使用量の推移

0 100 200 300 400 500

2008 2009 2010 2011 2012

GWh

年度

つくば 東海

366 304 158 257 380 0 100 200 300 400

2008 2009 2010 2011 2012

万m3

年度

257 245

165 175

250

※ 1軽油の換算係数は、2011 年度以降は 37.7 GJ/kL、2010 年度

以前は 38.2 GJ/kL を使用しています。

※ 2J-PARC の電力使用量については、JAEA との協議による分担

分を記載しています。

電力使用量の推移※ 2

0 20 40 60

2008 2009 2010 2011 2012

kL

年度

39 48

55 37 40

石油燃料使用量の推移

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

2008 2009 2010 2011 2012

TJ

年度

つくば 東海

3,630 3,760 3,040

1,601 2,555

(29)

環境との共生

温室効果ガス

KEK 全体の排出量    

一般需要による排出量

2012 年度の総二酸化炭素排出量は 145,618 t-CO2でし

た。その内訳は電力使用量によるものが 97% 以上を占め ています。東日本大震災からの復興と、J-PARC の運転出 力が増大したことから、東海キャンパスにおいて大きく増 加しました。また、つくばキャンパスにおいても、2010 年 6 月末に KEKB 加速器を運転停止したことと震災による影 響で 2011 年度は大きく減少しましたが、2012 年度の排出 量は増加したものの、震災前よりは抑制されています。

加速器施設などの運転以外に使用している研究棟、管 理棟などの一般電力と都市ガス及び石油燃料等の一般需 要による二酸化炭素排出量について、「機構における地球 温暖化対策のための計画書」で 2012 年度までに 2006 年 度比 5% 減の目標を設定しています。

二酸化炭素排出量削減のため、省エネパトロール、エ ネルギー使用量の職員への周知徹底などの努力を行いま した。震災の影響が大きかった 2011 年度と比べると14% 増となりましたが、2006 年度比では 14% 減となり、5% 減の目標を達成しました。

■ 太陽光発電発電量

KEK つくばキャンパスには、管理棟(50 kW) と 4 号館(17 kW)の屋上に太陽光発電設備を設 置しています。2012 年度は、合わせて 86 MWh を発電しました。

太陽光発電発電量の推移

0 50 100 150

2008 2009 2010 2011 2012

MWh

年度

4号館 管理棟

18

84 78 86

26

※1電力の換算係数は、2012年度は、0.550 t-CO

2、2011年度は0.559

t-CO2/MWh、2010 年度以前は 0.555 t-CO2/GJ を、都市ガス

の換算係数は、2011 年度以降は 0.0499 t-CO2/GJ を、2010 年

度以前は 0.506 t-CO2/GJ を使用しています。

0 1 2 3 4 5

2008 2009 2010 2011 2012

千t-CO2

年度

都市ガス 石油燃料

電力

3.0 2.7 3.2 2.6 2.9

0 100 200 300

2008 2009 2010 2011 2012

千t-CO2

年度

つくば 東海

209

175

92 146

217

一般需要による CO2排出量の推移※ 1

(30)

環境との共生

物質

印刷用紙

2012 年度の印刷用紙購入量は約 22トンでした。前年度 に引き続きペーパーレス会議の開催に努めました。これに よる印刷用紙の削減量は約 2.8トンに当たります。

今後とも申請書等の電子化、ペーパーレス会議の効率的 な開催、両面印刷の徹底など、紙の使用量削減に努めて

いきます。 印刷用紙購入量の推移

グリーン購入

グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)を遵守し、環境負荷低減に資する製品・ サービス(特定調達品目)などの調達を進めるとともに、毎年その実績を関係省庁に報告しています。2012 年度 における特定調達品目の調達状況は、下記の通りです。

2013 年度以降も引き続き機構内への周知徹底を図り、全ての調達において継続して適合商品を購入すること に努めていきます。

分野 品目例 全調達量 特定調達品目調達量 特定調達品目調達率

紙類 コピー用紙など 132,141 kg 132,141 kg 100%

文具類 ボールペンなど 122,660 個 122,660 個 100%

オフィス家具類 什器など 780 台 780 台 100%

OA 機器 コピー機など 27,401 台 27,401 台 100%

移動電話 携帯電話 9 台 9 台 100%

家電製品 冷蔵庫など 26 台 26 台 100%

エアコンディショナー等 エアコンなど 43 台 43 台 100%

照明 蛍光灯など 4,582 本 4,582 本 100%

自動車等 乗用車用タイヤなど 16 本 16 本 100%

消火器 消火器 12 本 12 本 100%

制服・作業服 作業服など 5,572 着 5,572 着 100%

インテリア・寝具類 カーテンなど 166 枚 166 枚 100%

作業手袋 作業手袋 20,985 組 20,985 組 100%

その他繊維製品 ブルーシートなど 57 枚 57 枚 100%

防災備蓄用品 アルファ化米など 320 個 320 個 100%

役務 印刷など 2,373 件 2,373 件 100%

※各調達数量は分野ごとの品目をすべて集計しています。

0 10 20 30 40 50

2008 2009 2010 2011 2012

t

年度

32

(31)

環境との共生

廃棄物

一般廃棄物として 74トンの可燃物、9トンの不燃物を排出しました。いずれも排出量はやや減少傾向にありま すが、今後もゴミの分別やリサイクルに対する意識の向上に努めていきます。

産業廃棄物 544トンの大部分はプラスチック類や、木屑、がれき、コンクリートなどが占めています。2012 年度は、 工事等によるコンクリートや木屑類などの排出量が増加しました。建物の改修工事に伴い石綿を含有する廃棄物 類も発生しましたが、専門の業者による除去作業の後、廃棄物処理業者により適切に処分されました。PCB を 含む廃棄物類も、専用の処理施設で処理されました。今後も、廃棄物の内容を十分に把握し、適切な処理を行っ ていきます。

■ 一般廃棄物

■ 産業廃棄物

2008 年度 2009 年度 2010 年度 2011 年度 2012 年度

可燃物 85,980 112,650 93,460 75,070 74,180

不燃物 12,060 13,110 9,360 7,720 8,610

合計 98,040 125,760 102,820 82,790 82,790

( 単位:kg)

2008 年度 2009 年度 2010 年度 2011 年度 2012 年度

プラスチック 152,393 201,257 199,795 82,750 129,840

木屑 80,800 102,235 59,340 34,290 303,680

金属類 288 4,821 6,780 1,000 2,010

コンクリート、がれき類 350 101,562 9,540 43,820 99,290

蛍光灯 0 1,500 1,600 2,000 1,100

蓄電池 0 800 320 640 2,100

PCB 廃棄物 0 0 3,683 0 6,311

合計 233,831 412,175 281,058 164,500 544,331

図 10:KEK における超伝導加速空洞製造施設(CFF) GHz 超伝導加速空洞(図 9)の開発では、ILC が求める空洞性能を達成できる企業及び研究所の協力の輪 が大きく広がっています(表 1)。さらに、KEK では、2010 年からは超伝導加速空洞製造施設(CFF)を立ち上げ、超伝導加速空洞製造・量産技術を産業界との協力によって、技術基盤の向上、施設の充実を計っています(図 10)。 図 9:ILC(1.3 GHz)9 連・超伝導加速空洞(KEK 型)。 表 1:ILC 超伝導加速空洞の製造・表面処理

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